▼起業家File.054 奥山俊一さん  認定NPO法人プラチナギルドの会 理事長


 

シニアが動く。日本が変わる‼ シニアの真の社会参画を実現するNPO中間支援。


1943年愛知県豊橋市生まれ。戦中戦後暫くは岡山で育つ。大阪大学経済学部卒業後住友銀行へ入行。心斎橋支店勤務を経て、ロンドン支店へ。ディーリング、国際金融を通算18年間担当し、日本の金融グローバル化を渦中で体感する。帰国後国際業務担当役員、㈱日本総研代表取締役、会長を経て特別顧問に(現職)。また2013年「一人でも多くのシニアが社会参画・貢献する社会の実現」を目的とする「NPO法人プラチナ・ギルドの会」を仲間と共に設立。プラチナ・ギルドアワードやアカデミー事業を立ち上げ3年で認定NPOに昇格、4期目からの更なる充実発展を目指す‼


▲里山で戯れる生活(上)、中学は体操部(下)
▲里山で戯れる生活(上)、中学は体操部(下)

●幼少~大学時代―

中学運動会演技での怪我から体操を断念、興味は英語の世界へ‼
語学部やESSでの活動で、英語スキルを更に磨き海外志向が高まった。

 

1943年愛知県豊橋市生まれ。かなり昔の記憶なのでうろ覚えですが、戦時下混乱の中で岡山市にある父方の実家へ疎開し、戦後も暫くは自然豊かな環境の中で、山羊と戯れたながら伸び伸びと育ち(写真上)、その後は父の仕事の関係で福知山市、伊丹市、和泉市を転々とする生活が続きました。

中学時代は体操部に所属していましたが、運動会の跳び箱演技に失敗して転倒、怪我をして止む無く体操を断念した経緯があります。その後は、担任が素敵な英語の先生だったことから、私の興味は、運動から「英語の世界」に移ってゆきました。このことが高校進学やその後の私の人生に大きく影響することになったのです。


高校では語学部(顧問の先生は外国人)に所属し、英語力に磨きを掛け、大阪府弁論大会を始め様々なディベート大会で優秀な成績を修めることができました。当初は医学部志望でしたが、結局数学と英語で勝負できる大阪大学経済学部を受験し合格、そして憧れの下宿生活が始まりました。

住まいは大学下の阪急石橋駅近くにある「豊楽荘」で、200人位雑居する賄い付きの寮でした。もちろんサークルはESSに所属し3年時は部長も務めました。日本の国際化が急速に拡がった時代で、大阪でも大規模な「国際見本市」が開催され、コカ・コーラのパビリオンの案内役(通訳)を担当。家庭教師以上の高収入、ビジネス英語スキルの向上、さらに他大学の女子学生とも自然と親しくなり、一石三鳥の機会に恵まれました(笑。

外国人と接する機会も増え、諸外国の文化生活やビジネス情報に触れる度に、海外への憧れを強く抱くようになりました。そしてハワイ大学のケネディ・イーストウェストセンターで米国国費留学制度があることを知り、試験(筆記&面接)を受けて合格。ただ併行して就職活動も継続しており、当時関西で給与待遇の最も良い「住友銀行」と「住友化学」の2社だけは試験を受けていました。その住友銀行の最終面接で「当行の留学制度を使えば給与を貰いながら留学ができるよ」という甘い言葉に乗り(笑、ハワイ留学を断って住友銀行に入行したのです。


▲ウィンブルドンセンターコート正面(子供たちと)
▲ウィンブルドンセンターコート正面(子供たちと)

●住友銀行時代

海外転勤希望を支店長に直訴し、念願のロンドン支店へ‼

合計18年間の海外勤務で国際金融のプロフェッショナルに。

 

入行して数ケ月の新人研修の後、心斎橋支店で取引先係を担当し、採用面接時に約束した留学制度の順番が自分にいつ回ってくるのかだけを期待して仕事を頑張りました。しかし、6年間待ち続けましたが海外留学の声が掛かることはなく、採用担当者の甘言に騙された思いに駆られました。そこで、当時の支店長に「私は海外で仕事をするために銀行に入ったので転勤させてほしい」と思い切って直訴すると、なんと翌1972年4月にロンドン支店に転勤辞令が出たのです。しかもロンドン支店の日本人最年少(28歳)でした。待望のロンドン支店で最初の1年間は事務の総括(決算、リコンサイル、総務等)を担当し、慣れない業務環境に苦労しましたが、その後は資金、為替ディーリング、国際金融(シンジケート・ローン)等を担当し大変勉強になりました。1970年代は英国経済が下降し、日本の金融界が世界先進国に並ぶほどダイナミックな時代で、日本の格付け信用度が大幅にランクアップする様子を渦中で体験できたのです。


さらに支店の英国人スタッフやお客様と、プライベートなホームパーティなど現地の生活文化に触れる機会が多かったことは貴重な経験となりました。毎年恒例のウィンブルドンテニス大会やロイヤルアスコット競馬場の観戦など英国紳士淑女との上流階級の社交場は、とても華やかで得難い経験でした。またふだんは仕事が超多忙で寝る間もなく働いていたのですが、夏冬の長期休暇だけは、家族とともにホリディを楽しみ、のんびり家族サービスできる時間を持つことができました(写真)。

1980年代には国際部に異動し、ロンドン支店と本店との往復だけではなく、欧米各国に出張の機会を得て、世界の国際金融の現場を肌で感じることが出来ました。その後1997年のアジア危機の時、ロンドンから帰国し国際業務担当経営会議役員に就任。しかしバブルの後始末で、優良海外資産を止む無く売却し国内の不良資産の処理をせざるを得なかった時は実に悔しい思いをしました。その後さくら銀行との合併前後の1年間は、住友銀行と新銀行の国際部門担当役員として参画し、無事重責を果たすことができました…。

 


▲プラチナ・ギルドの会事務局(創業)メンバーで乾杯‼
▲プラチナ・ギルドの会事務局(創業)メンバーで乾杯‼

●起業のキッカケ、決断、起業―

日本総研の社長、会長、特別顧問時代、新しい世界観に出会う。
「非営利組織が次代を担う!!(byドラッガー)」の言葉に発奮!!

 

個人的にはロンドン赴任時代から緑内障が進行してきており、これで退任と考えていた時期に、当時の頭取からお呼びが掛かり、「日本総合研究所社長」の打診を受けました。国際金融を中心に銀行業務一筋でしたので、日本総研の業務詳細について改めて確認してみると、300名のコンサルタント、60名のマクロ・エコノミスト、創発戦略センター40名など、システムインテグレーション、コンサルテーション、総研部門を有する国内トップクラスの総合情報企業に成長していたのです。そして代表取締役社長を4年、会長職を1年務め、現在も特別顧問として活動しています。銀行時代に比べて短い期間ですが、日本総研時代には政府を始め多岐に渡る大手企業とのプロジェクトのマネジメントや社内外との人的交流によって、掛け替えのない知識経験と人脈財産を築くことができました。

その一人に、嵯峨生馬氏がいます。彼は私が日本総研社長時代の新入社員で、ある時「地域通貨」という耳慣れぬ説明を聞く機会がありました。その後は直接の交流はなかったのですが、私が退任後に何気なくTVニュース番組(プロボノが日本を変える‼…)を観ていた時、偶然彼が出演していたのです。直ぐに本人と連絡を取ると、日本総研を既に退職しNPO法人サービスグラントの立上げ直後で、設立間もないNPOの経営支援を特別顧問として引受け、サンフランシスコに「ボード・マッチ・イベント」にも同行したり、とても充実した時間を共有することができました。またこの時期に大きな衝撃を受けた一冊が、PFドラッガーの「非営利組織の経営」です。あの経営の神様が「非営利組織が次の社会の主役になる‼…」と提唱していて、日本の高度成長の企業戦士として長きに渡り「利益追求主義の先に幸せがある」と信じていた私の常識が大きく揺らいだからです。そして若い嵯峨氏の熱い想いに触れ、日本でもNPO活動など非営利組織が次世代社会の起爆剤になると実感したのです。

▲プロボノ活動を仲介する日本最大のNPOサービスグラント
▲プロボノ活動を仲介する日本最大のNPOサービスグラント

また私の海外生活経験から、欧米社会のライフスタイルの優先順位は、家族→国家→企業の順番ですが、日本社会では、企業→家族→国家になっていて、日本における将来の超高齢化社会の到来を考えると、市民社会(コミュニティ)の役割を再考する必要性を痛感していました。さらに日本社会の歪み(特に企業と企業人のあり方)が気になり、2012年に銀行時代の友人たちと共に「プラチナ・ギルドの会(準備会)」を立ち上げたのです。

また日本総研の会長を退任して直ぐに、私の不注意で、右目を完全に失明してしまいました。読書、PC、運動などの活動に若干の制約はありますが、ハンディキャップを持つ身になって初めて弱者の気持ちに気付く点も多々あり、座右の銘「頭は低く、眼は高く、心は広く』を実践して極めようと再決意したのもこの頃です。

「プラチナ・ギルドの会」は、その後1年位任意団体として、市ヶ谷の銀泉会館で仲間と共に構想を練った後、メンバーの総意で2013年10月にNPO法人化しました。「一人でも多くのシニアが社会参画・貢献する社会を実現すること」を会の目的とし「シニアが動く。日本が変わる。」というキャッチフレーズも決定。今となれば良い想い出ですが、当初は「NPOで何をするか?」などコンセプトの合意形成に予想以上の時間を要しました。私の個人的な考えは最初から「日本の歪んだビジネス社会にメスを入れないと健全な市民社会は実現しない」との思いであり、自分自身の使命として、若い社会起業家の支援に関心を持っていますが、「シニア世代が自分の関心のある領域で各自の経験と得意技を生かし社会貢献できれば素晴らしい未来が創造できる」と信じていました。


▲第2回目の「プラチナ・ギルドアワード」イベント
▲第2回目の「プラチナ・ギルドアワード」イベント

●起業後のエピソード―

アクティブシニアの社会貢献活動を表彰する「アワード事業」、
地域貢献意識を育む体験型研修「アカデミー事業」が2本柱に‼

 

 まず最初に手掛けた事業が、アクティブ・シニアの社会貢献活動を表彰する「プラチナ・ギルド アワード事業」でした。時代はシニアがビジネスで培ってきたスキル・経験・人脈等の財産をより良い社会の実現のために活かしてほしいと待ち望んでいます。その一方シニアたちも地域に暮らす市民として、今までの仕事の仕方とは一味違う、時代が要請する働きをすることで社会貢献したいと願っています。そこで会社人・組織人として積み上げた財産を活用し、あるいは新たに得たスキルや知識等を加えて素晴らしい社会貢献活動の表彰制度を企画したのです。受賞者の方々のご活動が同世代並びに次世代のよきお手本となり、シニアの社会参画の機会創出に繋がる効果も期待しています。

そして選考委員には、さわやか財団の堀田力さん、「世界優秀女性起業家賞」を受賞された谷口郁子さんなど著名な方をお迎えしてスタートしました。現在3回目のアワードを終え合計15団体を表彰、受賞者の輪が更に拡がっているのを感じます。

第2番目に取り組んだのは「プラチナ・ギルド アカデミー事業」でした。シニアの社会貢献意欲は強いのですが、実際には、過去の成功体験が頭にこびりつき、フラットでボランタリーな組織で働くことの難しさを実感し、継続的な活動に繋がりにくいという状況がありました。

 

そこで55歳以上のシニア世代が、自分の将来像を見つめ直し、社会貢献活動、はたまた転職や起業などで社会デビューしやすい環境を整備するための「プラチナ・ギルド アカデミー」講座を開設し、座学・活動家の実体験発表・現場訪問研修を通して、シニア人材の地域貢献意識を育むことを企画しました。丁度NPOサービスグラントが東京都福祉局から2015年度に「地域包括ケアの仕組づくり」の事務局を受託したことからシニア研修を引き受け、第1回目を開催し公募で約50名の受講者が参加しました。その後多数のアカデミー受講者が、プラチナギルドの定例会に参加、当会への入会、さらには当会事業スタッフへの参加など、新たな活動への挑戦が具体的に始まるなど「次世代人材育成の場」としての期待も高まっています。

 NPO設立後3年間創意工夫を凝らしながら、各会員が持ち回り(手持ち弁当)で担当してきたお陰で、2016年2月に認定NPOの資格を取得することができました。来期からは企業とのコラボレーション、寄付金による事業補助を活用して活動内容を充実するステージへステップアップする時期に来ています。


▲毎月最終火曜夜開催の定例会(日本総研本社13階)
▲毎月最終火曜夜開催の定例会(日本総研本社13階)

●今後の夢、目標‼

第3の事業として「アドボカシ―事業」に取り組みたい‼

「祝‼認定NPO取得」質量共に充実したNEXTステージへ。

 

そして、今後第3の事業として取組みたいのが「アドボカシー事業」です。「アドボカシー」とは本来「擁護」「支持」「唱道」の意味を持つ言葉ですが、当会では「社会啓蒙活動として、アワード受賞者や当会会員の活動を世の中に広報し、社会の変容を促す」ことと定義しました。そのためには、インターネットやソーシャルメディアを上手く使いこなす必要があります。

しかし残念ながら、現会員のITレベルは限界があり、当初描いたインターネット上のNPO経営には限界を感じています。これからのNPO内での情報共有、スカイプ会議、SNSの活用などを通じ、NPO内外と効率的に繋がる経営が目下の課題となっています。

そこで今後の事業創出は、当会の次世代経営を担う人財を巻き込みながら進めたいと考えています。私も含めて当会経営の世代交代、現在の理事が引き続き全面的に支援するが、新しい事業モデル(収益事業を入れた)を持ち、志を同じくする50-60代の次世代リーダーに委譲する計画を進める予定で着手を始めた処です。色々な意味で次の3年間は、これまで蓄積したきたノウハウと新しいメンバーの相乗効果で質量共に充実した組織になることを期待しています。

個人的には、日本総研特別顧問、NPO法人サービスグラント特別顧問、一般社団法人賢人会議所副会長、一般社団法人国際化推進協会顧問、多世代企業家めびうすのWAアドバイザーなど当会以外の複数団体に役職を持つ中で、「世代間交流」「地域間交流(大阪他主要都市)」「国際的な連携」「自立できる収益モデルの構築」など相互連携を図りながら、当会のブランディングを高めて参りたいと考えております。

長い文章をお読みくださり、有難うございます。「プラチナ・ギルドの会」にご興味のある方は、定例会に一度ぜひ御参加ください。毎月最終火曜日夜18時から日本総研本社ビル(大崎/13階会議室)にて開催しております。



▼奥山俊一さんの座右の銘  
『頭は低く 眼は高く 心は広く

常に謙虚に、しかし目線は高く、心広く生きたいとの願望と自戒。現役時代ある寺で見つけ自分で額縁に入れたもので、今も自室に飾っている。

▶趣味:囲碁、謡曲
▶最近感動した映画:「地球交響曲第8番

▶尊敬する人:井上希道老師(広島、忠海の少林窟道場の指導者)
▶起業に最も役に立った本:ドラッカー「非営利組織の経営」
▶心に残った本1冊:SRコヴィー「7つの習慣」
▶好きなタレント:明石家さんま




〇認定NPO法人プラチナ・ギルドの会HP  
 http://platina-guild.org/
株式会社日本総合研究所 特別顧問  

 http://www.jri.co.jp/

○NPO法人サービスグラント 特別顧問
 https://www.servicegrant.or.jp/
〇奧山俊一FB個人ID
 https://www.facebook.com/shunnichi.okuyama



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