▼起業家File.059 川島史子さん   株式会社クラウドクリニック 代表取締役


 

在宅医療事務のアウトソーシングサービス ㈱クラウドクリニック

1974年名古屋市生まれ。高校時代は生徒会長、日本福祉大学社会福祉学部在学中は精神科病棟の看護助手、卒業後は精神科病院相談員、ネイルサロンやスクール経営を経て、ダスキンヘルスケアに入社し医療コンシェルジュ業務の共同研究に従事。医療事務作業補助者業務などのマネジメントに関わる。2015年「第2回女性チャレンジ制度」優秀賞を受賞などビジネスコンテストで事業プランをブラッシュアップすると同時に協業パートナーや資金を得て、在宅医療事務のアウトソーシングサービスを提供する㈱クラウドクリニックを設立。2017年福岡オペレーションセンター設立など本格活動展開に向けて奮闘中です。


▲両親と祖母
▲両親と祖母

●幼少~大学時代―

お婆ちゃん子で手芸や絵画好き、大人しい性格の子供時代。
高校で一転、生徒会長や学外活動など超ポジティブ派に変身。

 

1974年名古屋市生まれ。両親は銀座の修行時代に出会い結婚、江戸前寿司で有名な「名古屋のすし勘」を営んでいました。ですから父母は毎日朝早くから夜遅くまで仕事をしており、ゆっくり会えるのは週1回の定休日だけ。私はいつも祖母(ちゃーちゃん)と一緒で、絵を書いたり、手芸を習ったりと愛情タップリに育ててもらいました。祖母はとってもオシャレでチャーミング、晩年認知症になってもネイルを塗ったり身だしなみに気を使い、いつもニコニコしていました。手先が器用な祖母はお人形を作って養護施設に贈っており、そのお礼状が届くのを見て「私もボランティアしたい」と言って回りの大人がとても喜んでくれたことが嬉しかった記憶があります。「人のために何かをすることは良いことなのだ」と自然に覚えたのもこの頃です


当時の私は(今の自分からは想像できないほど)とても大人しく内気な性格でした(笑。また
4歳の時に小児腎炎を患い入院したり病弱な体質でもありました。さらに6歳で再入院、小学校入学直後の時期なので、病院内の院内学級でも入学式を2度経験しました。退院後は普通学級に通うことはできましたが、お医者さまからは安静にと小学校6年間体育は見学ばかりでした。なぜか4年生から太りだして、肥満児体質に(苦笑。


たまたま小学校の絵画コンクールに入賞して、近所の銀行に展示されたのを、祖母や両親がとても喜んでくれ、祖母が近所の絵画教室に通わせてくれました。油絵(抽象画)の有名な先生の教室で、結局中学卒業するまで習い続けました。中学では、友達の誘いで演劇部に入部。大道具を志望したのですが、女性だけの部活で私の声が大きかったという理由で以後3年間舞台に立つことに。演劇部では舞台度胸と演じることの楽しさを学びました。中2の時に新聞で知った聴覚視覚障害者と友達になり、一緒に手話講座を受講。とても表情豊かで私にはないものをたくさんもっていると衝撃をけ、この頃から福祉について学びたいという気持ちが芽生えました。

 

高校は名古屋短期大学付属桜花学園に入学、2000名規模の名古屋で一番のマンモス女子高。入学しても50クラス誰も知り合いがいなくて、思い切って声を掛けた人がその後大学まで一緒に行く親友となりました。彼女の影響を受け、活発なクラスの中心グループに入り私立高校生フェステバル」見に行ったことをキッカケに、1〜2年時はみんなで実行委員になって積極的に活動しました。また親友と妹と近所の児童館で行われた手話講座に通い、その後手話サークルを作り手話ども行っていました。そして3年時は厳しい校則改善のために文化祭実行委員長や生徒会長になりました。刺激的な高校生活で奥手な私の性格は完全にポジティブに変化したようです(笑。

大学は「福祉を学びたい‼」と日本福祉大学受験するも、第一志望だった社会福祉学部に落ちた為、同経済学部に入学。そして大学3年時に念願の社会福祉学部に転部編入することができました。夜間学部だったので、日中は学校のアルバイト求人から見つけた精神科病院の看護助手のバイトを始めました。58時から16時まで働き、その後知多半島の先の学校まで通学し授業が終わって帰ってくると21時過ぎ・・・。今思えば安い時給でよく働く真面目な(?)大学生だったと思います(笑。

バイト先の精神科病院は今と違い鉄格子があり、閉鎖病棟には牢獄のような隔離室も・・・。病院の直接雇用だったので看護師さんと一緒に血圧を測ったり、薬を配ったり、暴れる患者さんを押さえ込んだり・・・今では考えられないことですが、貴重な経験をさせていただきました。そんな中、明るくたくましい看護師さん達からは、緊迫した場面でも「は~い、そっち押さえてぇ♪」と明るい声で周りに不安を与えない配慮や患者さんと接する心構えなど、多くを学ぶことができました。また夏休みは特養、老健、病院など様々な医療介護の貴重な現場体験も、多くの気づきと刺激になりました。

 


●就職、社会人時代

ケースワーカー、ネイルアート、ブリザードフラワー…、

人生転々とするも「医療コンシェルジュ」という職種に出会う。

 

大学時代のアルバイトがきっかけで、大学卒業後は精神科病院に就職してケースワーカーに、相談員としてデイケアを担当しました。仕事はとても充実していましたが、約1年で寿退社し、初の東京へ東京での専業主婦生活は、とても時間をもて余したため、友人の奨めでネイルスクール通い始め、ちょうど資格取得の頃に、若気のいたりで離婚。

名古屋に戻るも居づらくて、新機一転友人の誘いもあり広島へ行き、折角覚えたネイルの仕事へ。暫くはネイルサロンで修行後、出張ネイルとして自営をスタート。その後ネイルスクールの講師を経て、スクールの校長にスピード就任。さらに調子に乗って、友人と一緒に「女性の活躍できる場を作りたい‼」と、Atelier de Muse」を立ち上げようと、プリザーブドフラワーのリース販売を計画。そして東京へ進出…。

 

しかしビジネスとして継続することの難しさを感じ中途半端で終わっている医療福祉業界に戻りたいと考えるようになっていましたが、数年で法律や制度も変わっていたので、相談員としてのキャリアは諦めました。そんな時、日本医療コンシェルジュ研究所の立ち上げのお手伝いのお話をいただ民間資格である「医療コンシェルジュ」の資格を取得し、ボランティアで普及活動に尽力しておりました。すると名古屋大学との共同研究プロジェクト(2006)発足に伴い ダスキンヘルスケアヘッドハンティングいただき入社することに…

 

名古屋大学医学部付属病院にて医療コンシェルジュについての共同研究として、名古屋転居し、地域医療連携に携わることになりました。私の役割は、医師事務作業補助が診療報酬体制加算算定要件となることに伴い、名古屋医療センターにて業務分析、業務の立ち上げなどです日本医療コンシェルジュ研究所での医師事務作業補助研修立ち上げ業務も担当するなどとても充実した日々が続きました

また東京進出時に友人の紹介で出会い、出会ったときから自分らしくいられると思える運命の人との遭遇…付き合って1たたない時にが名古屋転勤となり、遠距離に…。その後彼も関西転勤したこともあり、それを機に結婚しました。ダスキンヘルスケアでは、共同研究員、医師事務作業補助の立ち上げの後、結婚に伴い関西転勤をお願いしました。関西では室長として10の組織のを任され、プロジェクトの責任者など多くの経験をさせて頂きました。

 


●起業のキッカケ、決断―

父の末期がんの在宅医療経験から新しい気づきが…。

急増する在宅医療の事務負担が社会的課題に‼

 

糖尿病で透析となりすし店を閉じ隠居生活をしていた父が、この頃体調を崩し膵臓がんステージ4bと診断されました。透析治療を行っていることから放射線治療もできず、仕方なく名古屋の自宅に戻っていました。写真は、父が亡くなる3週間前、家族で温泉旅行に出掛けた時のものです。その後1人で立ち上がることが難しくなり再入院、朝方の最期の瞬間に間に合わずに父は病院で亡くなりました。

その頃は起業する準備を進めていて、3週間後に会社設立決まっていたところでした。父が末期がんになり、改めて色々調べる中で在宅療養支援診療所の存在を知りました。長年医療業界に携わりながらも馴染みの薄かった在宅医療の世界について、父の死をきっかけに勉強会への参加や実習など学ぶこととなりました。

 

在宅医療の現場では居宅という独特な環境の中で、いまだに紙カルテが大半です。また、在宅医療は書類も多く、医師に大きな負担を強いています。私が過去に経験してきた「医療コンシェルジュ」や「医師事務作業補助」のスキルが在宅医療で生かせると、次第に確信へと変わってきたのです。

退職にあたり医療コンシェルジュの普及にもう一度取り組みたいと創業補助金に応募。テーマ「医療コンシェルジュとしての新たな女性雇用機会の創出」が、運良く平成24年度経済産業省補正予算「地域需要創造型等起業・創業促進事業」創業補助金事業に採択されたのです。そして2014829日、株式会社プラスエフ設立。ちょうど私の40歳の誕生日医療コンシェルジュサービスの提供会社としてスタートしました。さらに地域医療連携をより円滑にするための教育として、「医療経営を担う人材育成で医療サービスの向上の促進」で平成26年度第1回「東京都地域中小企業応援ファンド」助成対象事業も決定。2つの公的事業採択で、まだ生まれたばかりの会社なのに、大きな信用をベースに様々な人脈やお客様との関係を拡げることができました。


●もう一社の起業

ビジネスコンテストで自信と新しいリソースを掴む‼
そして新会社「クラウドクリニック」事業展開へ。

 

プラスエフの仕事の傍らで、ビジネスプランを更にブラッシュアップするために、いくつかのビジネスコンテストに応募し大きな成果を収めることができました

 〇第1デジタルヘルスコネクトビジネスプランコンテスト オーディエンス賞受賞

〇第15MIT-VFJビジネスプランコンテスト&クリニックスタートアップ部門ファイナリスト認定

日本起業アイデア実現プロジェクト〜第2回女性起業チャレンジ制度グランプリ受賞(賞金200万円)

ビジネスプランコンテストは、その審査過程でビジネスプランをブラッシュアップできるばかりでなく、多くの出会いや自分自身の成長に繋がりました。特に私の場合は、出場者との出会いとその後の情報交換から関係性が発展し、ビジネスパートナーとしての
絆が生まれ協業に至ることができました。そしてビジネスプランコンテストのブラッシュアッププラン、賞金、協業パートナーから生まれたのが「株式会社クラウドクリニック」です。

在宅医療の担い手である医師の事務負担の軽減実現のために、クラウド型電子カルテやクラウド型WEBサービス(チャットツール・ビデオ会議ツール・その他各種医療連携ツール)を活用した、在宅医療機関の事務作業を遠隔オペレーションセンターにて受託するアウトソーシングサービスです。顧客となる医師とクラウド型電子カルテを共有することで、具体的に次のようなサービスを提供します。
➀医師の指示によるカルテ代行入力およびカルテサマリの作成業務
➁各種在宅医療関連書類作成代行業務
③連携先機関(ケアマネ・訪問看護・介護施設・家族等)との情報共有及びスケジュール調整や質問対応などのコールセンター業務
④医師および在宅医療機関スタッフに対する診療報酬請求やカルテ記載ルールなどのチェック・標準化支援

 

サービスリリース当初は、新規開業の医師向けのパッケージサービスを想定していましたが、「まずはサービスを試してみたい」「急な事務員の欠員のため一部のみお願いしたい」など様々なお問い合わせを頂き、そのご意見やご要望を受け、カルテ1枚、書類1枚からでも従量課金で依頼できるようにしました。「サマリー作成サービス」などは、現場の先生からのご要望で生まれたサービスです。

 


●今後の夢、目標‼

 2017年福岡にオペレーションセンターを開設し本格稼働体制に。
 
国内でオンリーワンのビジネスモデル、10年で10%シェア目標‼

 

父が末期がんで亡くなったことを通して、在宅医療診療所を知りました。この事業には父の天国からの応援の声を感じると同時に、在宅医療業界における社会的課題解決という大きなミッションと受け止めています。

自分の過去の経験が活かせ、今まで出会った方々のご縁が活かせ、そして応援して下さる現場の先生方がいます。意欲のある医師の方々が苦労されているのを目の当たりにし、今まで培ったノウハウを活用し、遠隔から医師の皆さまをサポートすることで、医師は診療に専念でき、医療サービス全体の質・量の向上と効率化が図れ、患者さんへのよりよい診療につながると信じて取り組んでいます。また、クラウドクリニックのサービスを提供するスタッフには、結婚出産などで医療現場を離れた女性の活用や、実務経験のない有医療資格者(医療事務等)からの育成体制を構築して、新しい女性雇用の場を創出したいと考えております。


在宅医療の事務負担軽減は診療所だけではなく、訪問薬局への対応、訪問看護ステーションなど広く福祉分野にも共通する課題なので、更に大きな目標に向け取り組んで参ります。

➀自動入力や遠隔診療システムの応用、AIの活用とICTを活用し、効率化を図る。

➁3年以内に業界の中で確固たるポジションおよび信頼を勝ち取る。

③10年後には在宅医療診療所件数約1万件の10%のシェア獲得を目指す。

 

また、上記に対応するためにスタッフの在宅ワークを可能とするセキュアなシステムを構築しつつ、有資格者の復職支援・教育支援、及び海外における人材の活用も進める予定です。2017年にはオペレーションセンターを福岡に開設するために東奔西走中です。

 

長い文章をお読みいただき有難うございました。毎日地道に活動をしておりますので、築地近辺にお越しの際は、ぜひ会社へ見学にお立ち寄りください。


 
▼川島史子さんの座右の銘 
『人を愛して、運を逃がさず、縁を大事に、恩を忘れない。

「愛運縁恩(あいうえお)」どこかで見つけたとても良い言葉。いつも肝に銘じています。



〇株式会社クラウドクリニック ホームページ  
 http://cloudclinic.jp/
〇株式会社プラスエフ ホームページ
   http://www.plus-f.jp/
○川島史子さんFaceook個人アカウント
 https://www.facebook.com/fumiko.kawashima.92



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