▼起業家File.024 三宅郁美さん ㈱Maison de Saveur 代表取締役



(プロフィール) 料理研究家 料理サロン主宰 キッシュ&焼き菓子の店経営
1955年千葉県生まれ。専門学校卒業後、清水建設入社、27歳で結婚。新婚早々夫の海外赴任で、エジプト、パリ、ニューヨークと約10年の海外生活。5年間暮らしたパリ時代に「ル・コルドン・ブルー」「エコール・リッツ・エスコフィエ」で菓子・料理を学びディプロマを取得。'90年NY時代に念願の料理教室を開催することになり、100名以上の申込み・・・その後も大盛況。帰国後に三宅郁美料理サロン「LE Tablier Blanc」を主宰し、以後23年間毎月開催中。また'09年「キッシュ&タルト(日東書院本社)」が20刷りの大ヒット、'10年には目白駅前にキッシュ専門店「quiche quiche」をOPENし、地域のお客様から愛されるお店に。'13年秋ネット通販を開始して、美味しいキッシュと焼き菓子の全国発送を開始した。


●幼少~専業主婦時代ー

華道・筝曲の習い事のお陰で、お転婆娘からの卒業・・・。
ごくごく普通の就職、結婚から一転、海外赴任生活へ!!

 

1955年千葉県生まれ。九十九里の海辺近くで、お転婆娘として育ちました。新しいスカートを買っても直ぐに破いて帰って来るような(笑、いつも母を困らせていたようです。ですから両親が心配して、小学校高学年の時から、母が若い頃お世話になった華道教室(池坊)、筝曲教室(生田流)へ通わせられ、27歳で結婚して家を出るまでずっと続けさせられました。小さい頃は嫌々通っていたのですが、祖母のような先生方に技術ばかりでなく、日常の所作・躾まで厳しくご指導頂いたことが、今になって役立っています。

 

専門学校「津田スクールオブビジネス」卒業後、20歳で清水建設㈱へ就職。高度成長期に向かう上り坂のゼネコン業界ですから、それはそれは派手な時期。アフターファイブは美味しいお料理やお酒を沢山ご馳走になり、帰りのタクシー券まで頂ける時代でした(笑。

 

27歳で結婚、ところが新婚早々に夫が海外赴任をすることになり、転勤先はエジプトでした。アレキサンドリアというエジプト第2の都市で、欧州貴族の避暑地として有名な街、現地には親日的な方々が多かったのでとても居心地がよく、優雅な生活を楽しめました。

 

その後パリへ転勤、美食の都フランスでは、とにかく美味しいお料理を堪能できたことが幸せでした。海外赴任生活を苦にする方も多いと聞きましたが、私達夫婦はその状況を受け入れて楽めるタイプなので、現地での友人、ヨーロッパの国々の友人も増え、若かった所為もあり、とても充実した毎日でした。この折に、夫がフランスのビジネススクールで勉強したため、今では世界中に散った友人たちとの交流が、生活に幅を広げてくれています。
  


●起業のキッカケー
これからの人生を充実させるために「料理を仕事にしたい!!」・・・、
「ル・コルドン・ブルー」リッツ・エスコフィエ」のディプロマ取得。

 

楽しい海外赴任生活の反面、子宝には恵まれず悩んでいました。今では考えられませんが当時の「高齢出産」は、35歳が境だという通説があったんです。33歳になっても子供ができず、これからの自分の人生を考えるターニングポイントに差し掛かっていました。子供のいない人生を選ばざるを得ないこれからの生活を充実させるには「無理なく、一番好きな事を仕事にできないか」など随分悩みました。

 

その時に脳裏をよぎったものは既に資格のある「筝曲の講師」「華道の講師」などでした。しかし「料理を仕事にしたい!!」と思うようになったのは、たまたま美食の都パリ駐在で、フランス料理を勉強中でしたし、日本でも料理教室に通ったり、夫の知り合いの中国人の方に中国料理を習ったりした経験もあったからです。夫も「たとえ収入に結びつかなくとも生涯好きな趣味を貫き、何かに熱中しているパートナーで有ってほしい」という志向性が高い人でしたので、私の考えを応援してくれました。

 

そしてフランスを離れる時期が近づいてきましたので、逆算してパリの料理学校へ行き、ディプロマ(卒業証書)を取得することに・・・。「ル・コルドン・ブルー(首席で卒業)」ではお菓子を、「エコール・リッツ・エスコフィエ」では料理を学びました。この先料理の仕事に付く時に、何かカタチ(免状)があった方が有利になるだろうと思ったからです。

  

これでやっと日本に帰国と思っていたのですが、なんとそのままニューヨーク駐在へ・・・。
   


  ▲三宅郁美料理サロン「LE TABLIER BLANC」
  ▲三宅郁美料理サロン「LE TABLIER BLANC」

起業の決断
友達からの突然の電話「空き広告スペースあり・・・」
100人を超える申し込みには嬉しい悲鳴。

 

ニューヨークでの生活も毎日が新鮮で刺激的で、「料理の道で仕事をしよう!!」と思いながらも、どう始めてよいのか?わからないまま時が過ぎていきました。そんなある日のことです、「ニューヨーク読売」に勤めている友人から連絡をもらって、「数行の広告スペースに空きがあるので『お料理教えます!!生徒さん募集』と載せてみないか?」・・と薦めてくれたのです。起業の決断と言われると、私の場合あったのか?なかったのか?よくわかりませんが、この時友人の問いかけに即座にOKしたのが、その瞬間だったのではないかと思います。

 

その結果、他の友人がクチコミで集めてくれたこともあり、あっと言う間に100名を超える生徒さんが集まったのです。ほとんどがニューヨーク在住の駐在員の奥様方でした。本当に幸運に恵まれて、この機会がなければ今の私の仕事はなかったかも知れません。

 

とにかく無我夢中で教えました。最初の頃は、教える私も熟してなくて下手なんですけど、だからこそ一生懸命やりましたので、熱意は伝わったんだと思います。ただ当初から心掛けていたことは、単なる料理スキルのレッスン教室ではなく、料理の食材、作り方や食べ方を通して、その背景にある文化やライフスタイルを伝えたり、さらに参加している方々との楽しい交流の輪を拡げる、そんな料理サロンを目指していました。

 

ですから料理学校や教室のように卒業という概念はありません。またサロンでは「生徒」という云いかたはせず、「お客様」という呼び方をさせて頂いております。料理サロンはNY時代含めて今年で23年目になりますが、20年以上の生徒さんが10名以上、15年以上の生徒さんが20名以上もいらっしゃり、かなり長いお付合いの生徒さんが多いです。毎月十数回、自宅兼キッチンスタジオのお料理サロンに各回6人程度お招きして、新しいお料理を作りながら交流を楽しんで頂くスタイルなので、長続きしているのだと思います。毎回新鮮味のある素材やメニューレシピの開発には最も時間を要するところで、お花やお皿のテーブルコーディネートに至る空間づくりまで心くばりしています。

 
でもずっと順調だった訳ではありません。帰国して一時期、埼玉県川口駅近くのマンションに料理サロンをOPENしたのですが、生徒さんが1人2人の時もありましたし、準備をして待っていても中々生徒さんがいらっしゃらない時…、朝電話がなると「キャンセルのお知らせ」かと思いノイローゼになりそうな時…などもありました。立地条件が悪かったので目白に引っ越したり、「レシピをどこかに掲載したい」と思っていたら掲載できるようになったり、「カルチャースクールでやりたい」と思っていたら実現したり、本当に1年1年、一段一段登ってきたんです。
 


●起業後のエピソードー

'09年出版本「キッシュ&タルト」が今では20刷りの大ヒット!!
'10年キッシュ&焼き菓子専門店「quiche quiche」を目白にOPEN。

 色々な料理レシピのバリエーションを持っていますが、中でも一番好きなのが「キッシュ」でした。フランスとスイスの国境・ローレンヌ地方で420~430年前に発祥したと伝えられるキッシュは、玉ねぎとベーコンを卵のソースで和えて焼き上げたものです。現在はさまざまな食材で焼き上げ、欧米では一般的な家庭料理になっています。日本では馴染みが少なく、私としてはキッシュを日本人にもっと親しんでもらいたいと思っていました。以前の自書本の担当編集者に私から企画を出し、'09年春に出版したのが「キッシュ&タルト(日東書院本社刊)」、ジワジワと火がついて今では20刷りとなっています。更に'09年秋発売の「ケーク・サレ&パウンドケーキ」も現在10刷りです。この手の料理本は1万部でヒットと言われる世界だけにとっても嬉しいことです。

 

そして「本物のキッシュが食べてみたい」という読者の声におされ、'10年に東京・JR目白駅徒歩2分の場所にキッシュ&焼き菓子の店「quiche quiche(キシュキシュ)」をOPENスタッフ一同女性の目線から、旬の素材を使って添加物なしの素直な製品を、真心こめて丁寧に作っています。塩分控えめに焼き上げたキッシュとケーク・サレ、発酵バターを使って芳醇に焼き上げた焼き菓子など自慢の品々です。
お店を持ちたいと思うキッカケのひとつに、子供さんがいる女性や
子育てが終わって働く場に恵まれない女性たちが働ける場を提供したいという想いもあったんです。


ただ料理サロンの運営には自信はありましたが、お店の運営についてはズブの素人なので、夫の友人など沢山の方々にご協力頂いてプロジェクトチームが立ち上がりました。建築デザイナー、クリエイターなど、素敵なメンバーと毎晩ディスカッションを重ねて、OPENに至りました。まだまだ改善すべき点の多いヨチヨチ歩きのお店ですが、地道にやるしかないと思っています。今秋からキッシュの通販をスタートしましたので、新鮮な具材をたっぷり使って焼き上げたキッシュのメニューを皆さんにもお取り寄せでご賞味いただけたら嬉しいです。

 


  ▲キッシュと焼き菓子の店「quiche quiche」店内
  ▲キッシュと焼き菓子の店「quiche quiche」店内

●これからの夢・目標ー
毎日スタッフに支えられながらお店を営業中です。
次は都内か軽井沢に理想のカフェを出店したい!!

料理サロンは毎月のレシピに頭を悩ませる以外は、私にとりましては楽しさ満載です。料理本執筆、料理雑誌や新聞へのレシピ提供のお仕事はワクワクします。特に撮影時は、編集者、カメラマン、スタイリストの方たちが初対面であっても、同じ方向に向かって良いものを作ろうとするチームになれる事がとっても素敵です。

 

店も開店4年目に入りました。私の場合は「人」に尽きると思います。沢山の友人が関わってくれて、皆の協力で開店にこぎつけ、今はスタッフのお陰で営業出来ております。長い修行の後のキュイジニエやパティシエが独立したのではなく、素人が「製造販売店」を開業したので、今から思えば「何を知らないか・分っていないか」さえ知らなかった。知っているのは商品の作り方だけでした。それで、よく開店したものだなって、それを今考える方が怖いです。

 

現在、椎名町の新築ビル(来年4月OPEN予定)に開店するカフェ・プロジェクトに参加しています。新店を客観的に企画してみて、4年前の自分に立ち返ると、気づきの多い毎日です(汗。私のような全くの素人を開店まで導いて下さった友人たちに、今頃になってすごく感謝しています。その頃は自分の思い通りにならなくて、友人たちへの感謝が足りなかった事を、つくづく思い知らされています。

 

余裕ができたら、次は都内か軽井沢辺りにキッシュやサンドイッチ、サラダを中心にしたような「カフェ」を出店したいと考えています。ぜひ今後とも応援よろしくお願いいたします。目白に来られた際は、お気軽にお店へお立ち寄りくださいね。

 



●三宅郁美さんの座右の銘
  「Fairness

辞書では「公明正大」と訳すのでしょうけれど、勝手に【誠実に一生懸命】と訳しています。人にも自分にも常に誠実で一生懸命で有りたいと思っています。



「quiche quiche(キシュキシュ)」
東京都豊島区目白3-14-18 目白ヒカリハイツ1階
JR目白駅徒歩2分 電話03-6908-1544
営業時間 10:30~19:00 (火曜定休日)



▼三宅郁美の料理サロン&クッキングスタジオ
 http://imiyake.com/

▼「quiche quiche」ウェブショップ

 http://www.quichequiche.com/

▼キシュキシュFBページ
 https://www.facebook.com/quichequiche2010



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